相続税の税務調査立会い

相続税の税務調査とは?

相続税の税務調査立会い相続税の申告を済ませると次に気になるのが税務調査です。

税務調査とは税務調査官が、相続財産として申告した財産の状況を実際に確認しにくる手続きのことです。もし税務調査の結果、先に納めた相続税の金額が過少だった場合には、不足分の相続税はもちろんの事、ペナルティとして加算税や延滞税といった形で追加の税金も納める必要が出てきます。

こうなると「税務調査=怖い・嫌なもの」というイメージになってしまいますよね。確かに色々と疑われるのであまり気持ちの良いものではありませんが、対策をきちんとすれば過度に心配する必要はありません。

 

相続税の税務調査が行われる時期は?

実際には申告書を提出して1年から1年半後、大体三回忌が済んだ頃に行われるケースが良く見られます。金額の大きなものや複雑なもので綿密に調査してくる場合だと相続税の申告書を出してから2~3年後といったケースもあります。これくらいの年数が経つと、こちら側は申告をしたこと自体をちょっと忘れかけてるくらいです。

また、税務調査は、年中行われるわけではなく行われやすい時期というのがあります。

税務署は7月が人事異動なので、着任後の8月から12月には遺産総額が大きく手間がかかりそうな案件を、1月から3月は所得税確定申告の時期なので、税務署側も忙しいですし、立会する税理士も時間取れないので税務調査はあまり行われません。

5月から6月は6月末の調査件数のノルマ達成に向けて問題が少ないケースを選んで調査が行われている様に感じます。

そして相続税の時効は5年なので申告期限から5年を経過した場合にはもう調査の心配はないものと思われます。

では何故、申告期限から数年経ってから調査が来るのかと言いますと、相続税申告書に記載されている相続財産について細かく確認しているのです。税務署は金融機関の預貯金残高等を合法的に確認できますので、怪しい現預金の動き方や、亡くなった人の生前の確定申告書や年末調整の状況から見て、相続財産が少なすぎないか?等を入念に下調べとしています。

 

相続税の税務調査で狙われやすいケースは?

1 富裕層(財産総額が3憶円以上)である場合

日本全国の相続税申告の遺産総額の平均値が約2億~2憶5000万円ですので、財産が3億円以上あるようなケースでは、一般的に税務調査が来る確率が高くなります。

逆に遺産総額が1憶円未満の相続税申告では調査に来る確率が低いに様に感じます。

 

2 海外財産がある場合

国税庁HPの「平成28事務年度における相続税の調査の状況について」に以下の記載があります。

納税者の資産運用の国際化に対応し、相続税の適正な課税を実現するため、相続税調査の実施に当たっては、租税条約等に基づく情報交換制度を効果的に活用するなど、海外資産の把握に努めています。資料情報や相続人・被相続人の居住形態等から海外資産の相続が想定される事案など、海外資産関連事案については、本事務年度においても積極的に調査を実施します。(国税庁HPより)

上記の事から、海外財産がある場合には相続税の税務調査が来る確率が高くなる可能性があります。

 

3 税理士申告ではなく自己申告の場合

平成27年1月より相続税の基礎控除が4割縮減され、相続税の納税義務者が激増したことに伴い、「相続税申告は自分でもできる」といったようなネット記事も見かけるようになりました。実際に当事務所にご相談に来られた方でも、最終的にはご自身で相続税申告書を作成して提出された方もいらっしゃる様です。

一般の方でも所得税の確定申告なら毎年行う場合はありますが、相続税の申告となると後にも先にも一生に一回という方がほとんどだと思います。

そのような状況で完璧な相続税申告書が作成できる方が不思議です。税理士が作ったか否かは署名欄をみればすぐにわかります。この場合には財産総額が少額でも税務調査に来る確率が高くなる可能性があります。

 

相続税の税務調査で指摘されるポイントは?

1 現金預金

以下の資料は国税庁が公表している相続税の税務調査においての調査実績に係る財産別非違件数(平成28事務年度)です。

(国税庁HPより)

見ていただいて分かるように現金預金での指摘事案が群を抜いて高くなっています。

特に専業主婦のへそくり預金が該当しやすい名義預金や、贈与の否認等が指摘事項としては割合が高くなっています。

相続税の税務調査においては、過去10年分の預金通帳を確認して1回につき50万円以上の出金があると、その用途について確認します。

一つ一つ質問してきますが、過去の事なので覚えていないことがほとんどです。嘘はいけませんがわかる範囲で答えてください。

 

2  生命保険

生命保険金も注意が必要です。通常の契約者、被保険者共に被相続人となっている場合にはあまり計上漏れはありませんが、以下の様なケースが相続財産になるのを見逃している場合があります。

契約者=妻
被保険者=亡くなった夫
保険料負担者=妻の預金口座から落ちてはいるが実質的には夫の稼ぎから払っている

妻が契約者になっていても、実質的に保険料を負担していたのは亡くなった夫なので、受け取った保険金は相続税の対象であると判断されてしまうことがあります。 

 

3 貴金属や骨董品などを相続した場合

貴金属や骨董品については、財産総額が3憶円以上のいわゆる富裕層の方が保有している宝石や貴金属は計上していないと指摘を受ける可能性があります。

実は、税務署は富裕層の方が脱税しないか、常にマークしています。高価な宝石類や骨董品など購入するような富裕層は、専用のデータベースを作成して資産の全容を概ね把握しているようです。ですが一般的な方の数十万のネックレスや指輪等までは把握できませんのではまず指摘は受けません。

 

4 不動産

不動産は一般的に金額が大きく、相続財産として評価を行う際にも複雑な計算となるので税務調査で意見がわかれる事が多いです。また土地については小規模宅地等の特例等の相続税を大きく減税できる制度が利用できるケースが多いのでここの適用条件についても調査事項として挙がりやすいです。

一つ違えば結構な額の追徴課税を受ける場合もありますので注意が必要です。

税務調査に備えて土地の権利証や不動産を購入した時の契約書等はいつでも取り出せるように準備をしておくとよいと思います。

 

相続税の税務調査での対策は?

1 想定問答集を作って事前に話すことを考えておく

相続税の税務調査時には色々な質問がなされます。

一見「それって相続税に関係あるの?」みたいな質問まであるのですが、もちろんそれには意図があって質問されています。下に少し例示を挙げてみますね。

  • 被相続人さんは最期どのようにして亡くなられたのですか?
  • 被相続人さんは生前どんなことを趣味とされていましたか?
  • 遺族の皆様はどのようなお仕事をされていますか?

どれも、相続税の申告に関係ないように思いませんか?

でも実は以下の様な事を確認しています。

  • 被相続人さんは最期どのようにして亡くなられたのですか?
      答え:癌で長期入院していて、最期は病院でなくなりました。
      真意:相続が発生するだいぶ前から預金通帳の管理者は遺族だったのだな。
  • 被相続人さんは生前どんなことを趣味とされていましたか?
      答え:釣りやゴルフ、あとは骨董品の収集等も好きでしたよ。
      真意:釣り好き=船舶があるのでは?ゴルフ好き=ゴルフ会員権があるのでは?
         骨董品好き=高価な書画骨董があるのでは?
  • 遺族の皆様はどのようなお仕事をされていますか?
      答え:私(妻)は専業主婦です、子供たちは定職に就かずアルバイトをしています。
      真意:それにしては、遺族の方の預貯金が多いな。名義預金や贈与があったのではないか?(事前に遺族の方の預金口座も確認されています。)

といった具合です。

円滑に税務調査対応を進めるためにも事前に聞かれそうな事はピックアップしておくべきです。

 

2 嘘は絶対につかない

なんでもそうですが、嘘はいけません。

あるのに無い、しているのにしていない、このように回答することはお勧めしません。

税務署の調査能力はかなり優れています。

なんでそんなこと知ってるの?といった事まで調べています。

記憶が曖昧な場合はちょっと覚えてません、わからないものはわかりませんと正直に答えるべきです。

 

3 税務調査官に悪態はつかない

私は税務調査の事前打合わせ時に、「税務調査官は言葉巧みに質問してきますので無駄な事はあまりしゃべらず、聞かれたことだけに正直に答えてくださいね」とアドバイスします。

当日を迎えると、税務調査官が来られるまでは笑顔で話をしていたのに、税務調査官が来られると急に仏頂面になって質問にも「ああ」「うん」「わからないな」と明らかに塩対応される方がいます。

税務調査ロボが来るならこれでもいいですが、税務調査官も人間です。このような対応されてしまうと「なんだこの人、感じ悪いな。重箱の隅の隅までつついてやろう」となるのが普通です。追徴税額を取りに来ている事には間違いないのですが、ケンカをしに来ているわけではありません。通常のお客様と同様にビジネス的な対応をすべきです。

 

相続税の税務調査で税理士に立会を依頼するメリット

1 事前対策がしっかりとできる

個人事業主の方や、法人の経営者様であればある程度税務調査に対して免疫ができていますが、サラリーマンや公務員の方など.お勤めの方は税務署との接点がなく、税務調査に対して過度に不安になられたり、過度に慢心されたりします。もちろん相続税の税務調査なんて一生に1度、2度しか経験しませんので当然です。

ですが税務署は税務調査が初めてだからといって手を抜くことはしません。そのまま何の心構えもせずに税務調査に臨んでは、負け戦確定です。

税務調査当日の流れの説明から全体の流れ、想定問答集の作成や、リスクになりそうな部分のピックアップ等の事前対策を行い万全の体制で税務調査を迎えられるのも税理士に依頼するメリットです。

 

2 相続人様の精神的なご負担を極力軽減することができます。

相続税の税務調査は精神的にとても疲れます。

理由としては相続税の税務調査は、家庭内の非常にプライベートな内容にも及ぶためです。例えば、遺族の方の通帳を見せてください、この金庫、この書棚を開けて下さい、通帳を見てこの出金は何ですか?ご職業は何をされていますか?ご趣味は何ですか?等々…。

当然、プライベートな内容ですから答えにくいもの、答えたくないものもありますよね。このような場合に答えたくないからという理由だけで拒否してしまうと税務調査官に変に怪しまれる可能性があります。そこで税理士が立ち会うことで、税務調査官に対して、質問の意図の確認、質問自体の変更、回答を保留してほしい等の交渉を行います。相続税の税務調査対応は、相続人様にとって心身的にも負担がかかるものです。その負担を軽減できるのも税理士に依頼するメリットです。

 

3 税務調査官のペースになるのを防ぎ、追徴税額を少しでも抑えることができる

税務調査の現場において税理士が立ち会えば一定の配慮をもった対応を税務調査官もとります。逆にご自身だけでの税務調査であれば完全に税務調査官のペースで税務調査が進められてしまいます。

実際に一度目はご自身だけで税務調査に対応、二回目の調査から私が立会した案件があったのですが、税務調査官の対応は全く違ったそうです。

立会がないと「これはダメです修正してください」と言われますが、税理士が立会すると「これはダメだと思うのですが古谷先生はどうお考えですか?」に変わりました。

調査官の多くは、公平公正な課税の実現のために正義感で申告漏れを見つけています。

が、中には強引な調査を行って無理矢理認めさせてしまう税務調査官もいます。

税務調査は一種の戦いなのです。しかも、相手は、日夜調査に明け暮れて腕を磨いているプロの税務調査官です。そのプロを相手に、税理士抜きで素人の相続人の方のみで税務調査の対応をすることは、最初から「負け試合」に臨むようなものです。支払追徴税額を少しでも抑える事ができるので税理士に依頼するメリットはあると思います。

 

4 調査後、税務署との交渉を代わりに行ってくれる

税務調査が行われた後には、当初行った相続税申告に関して指摘が入り、自主的に修正申告をするように促されます。それに従って、修正申告をすると税務調査での指摘事項を認めたことになり、後から再度修正することはほぼ不可能となります。そして、修正申告をすれば、不足の相続税とともに過少申告加算税と延滞税を課されます。

もし、税務調査での指摘に対して納得いかない内容があれば、それはきちんと否認するべきです。これは税務調査の現場で行われる事もありますが、多くは税務調査後に行います。

向こうが怪しんでいる事をそれは違うと証明していくわけですから、税務調査官との打合せは割と大変です。互いに納得できるまで続きます。それを自分たちだけで対応しようとすると、特に日中お勤めの方は仕事を休んでまで税務署に出向いて対応しないといけないので非常に大変なことです。

税理士であれば、納得のいくまで税務署と話し合いしをします。この部分の手間が省けるのも税理士に依頼するメリットだと思います。

 

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