相続対策とは?
皆様は相続対策といえば何をイメージされますか?我々税理士が話すと「相続税をいかに減らすか」という相続税対策が一番頭に思い浮かびやすいかと思います。
もちろんこれも大切な相続対策なのですが、他にも遺産分割争いを避けるための争族対策と遺された相続人達が相続税を納めるための現金を手元に残しておく相続税納税資金対策の2つもあります。
これら3つを合わせて「相続対策」といわれ、重要度でいうと次の順番です。
- 争族対策
- 節税対策
- 納税対策
争族対策
争族対策は大丈夫ですか?聞くと10人中9名の方は、「うちの家族はみんな仲がいいから争いなんて起きるはずがない」「うちなんてもめるほど財産は無いから心配ないよ」とお答えいただきます。
ですが実際には相続を巡って、「争族」となってしまうケースが多くなっています。
<遺産分割事件の推移>
年度 | 件数 |
平成28年度 | 12,188 |
平成27年度 | 12,615 |
平成26年度 | 12,577 |
平成25年度 | 12,263 |
平成24年度 | 11,737 |
平成23年度 | 10,793 |
平成22年度 | 10,849 |
平成21年度 | 10,741 |
平成20年度 | 10,202 |
(裁判所 司法統計より)
ご覧の通り平成20年から平成28年の間で遺産分割事件は約1.2倍増加しています。
<遺産分割事件が発生した遺産金額>
遺産価格 | 件数 |
1,000万以下 | 2,476 |
5,000万円以下 | 3,177 |
1億円以下 | 914 |
5億円以下 | 538 |
5億円超 | 42 |
算定不能・不詳 | 338 |
総数 | 7,485 |
(裁判所 司法統計より)
ご覧の通り、争族問題が発生している遺産金額は決して高くなく、大金持ちだけの問題ではないことがわかります。
遺族を想って遺した財産が家族の絆を壊してしまう「争族」の火種になるなんて被相続人の気持ちを考えると悲しいですが、仲の良かった兄弟姉妹が相続を機に、いがみ合うようになるケースは珍しいことではないのです。
また仲が悪くなるだけでなく納税資金対策や相続税対策にも悪影響を与えます。相続人が揉めてしまい、遺産分割協議で合意を得ることができなければ、財産の分割や名義の変更、現金化などが出来ず、遺族の手元に現金が無いため相続税の納税に支障をきたします。
せっかく税理士に相談して対策を考えても、、遺産分割協議で合意を得ないままでは節税効果の大きい配偶者控除や小規模宅地の減額特例も適用されずに、税負担は大きなものになってしまいます。
このようにすべてに直結するので、争族対策は是非最優先で生前に取り組んでいただきたい問題です。
相続税対策
相続税対策には生前対策と事後対策がありますが、効果的なのは生前対策がほとんどです。一定時点で同じくらいの財産を所有していても早いタイミングで生前対策をしっかりとしていた人と直前まで何もしていなかった人では、相続税額に驚くほど大きな違いが生じてしまいます。
平成27年1月の改正で基礎控除が4割縮減され、富裕層向けの税金だった相続税も我々一般市民向けの税金となってきました。都心の方では、家族構成にもよりますが自宅の土地建物とちょっと現金や預貯金があれば相続税の課税対象となります。
以上の点からもご自身の資産を守り遺された相続人達に迷惑をかけないために、早めに税理士等の専門家にご相談いただき相続税対策に取り組んでいただきたいと思います。
相続税納税資金対策
相続税の申告・納付期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内以内です。相続税を分割納付する延納や、物で払う物納といった制度もありますが、現金一括納付が原則ですので、納税のための現金あるいは現金化しやすい財産を準備しておく必要があります。
相続財産の内に現金預金が多額にある方は問題ありませんが、相続財産がほとんど不動産という方は、特に相続税の納税に備えておく必要があります。相続発生後、納税のためにその相続した不動産を売却して現金化しないと納税資金が準備できない等の問題が発生してしまい、せっかく遺してくれた不動産を有効活用できない可能性が出てきます。
遺された遺族に負担や気苦労をかけないように、相続の全体像をしっかり捉えて早めの納税資金対策をしておくことが大切です。
当事務所に相続対策を依頼するメリット
私は相続全体をワンストップ対応できる一般社団法人エンディングパートナーの理事を務めています。弊法人には税理士である私を始め、行政書士・司法書士・弁護士・不動産業者・葬儀業者・墓石店が在籍、外部協力者として生命保険業者がいます。
当事務所にご相談いただきました場合には相続税対策は税理士である当事務所にて行い、お客様の同意をいただいた上で、一般社団法人エンディングパートナーへ案件を回し遺言であれば行政書士、相続登記や相続手続きであれば司法書士、争族対策であれば弁護士、不動産の活用や処分であれば不動産業者、ご葬儀の相談であれば葬儀業者、墓地墓石のご相談であれば墓石店、生命保険のご相談であれば生命保険業者といった感じで相続対策に精通した各メンバーをご紹介いたします。有機的に連携して業務を行いますので、お客様がそれぞれ個別に専門家を探すよりもより効果的な相続対策が可能となります。
是非お気軽にご相談ください。
対策1 遺言書の作成
遺産分割を円滑にし争族対策に有効なものの一つに、遺言書の作成があります。
遺言書を作成することで、相続人全員による遺産分割協議を経ないでも、遺産分割をすることが可能になり、争族問題が生じるリスクを回避することができます。なお、遺言書は「自筆証書遺言」よりも公証人役場で作成する「公正証書遺言」をお勧めします。公正証書遺言は公文書ですので、内容が改ざんされたり紛失する心配もありません。
対策2 生命保険の活用
たとえば、土地や建物など、分けにくい不動産が遺産の大半を占めるような場合の遺産分割の対策に生命保険は活用できます。相続人となる子どもが2人いて、長男に不動産を相続させるとした場合、その財産に見合うように死亡保険金を設定し、被相続人を被保険者、次男を生命保険金の受取人にしておきます。自分が死んだら、長男は不動産、次男は死亡保険金を相続し、相続財産のバランスをとることができるのです。もし可能であれば次男には不動産に対する遺留分放棄をあらかじめしてもらっておくとより確実です。
また生命保険の死亡保険金は、「受取人固有の財産」であって、「被相続人の遺産」ではありませんので遺留分対策にも活用することができます。
死亡保険金は、「被相続人の遺産」ではないので遺産分割協議や遺留分算定の基礎となりません。現預金で遺す代わりに生命保険金として遺してあげることで、遺留分対象財産をある程度圧縮することが可能となります。そして、この保険金を他の財産をもらった代わりに支払うお金(代償分割金)の支払や遺留分相当額の支払の原資にすることで、より効果的な対策が可能になります。