払いすぎた相続税の還付について

払いすぎた相続税の還付

払いすぎた相続税の還付について税務署は相続税が少ない場合は連絡をしてきますが、相続税を払いすぎていても特に過払い分について連絡が来ることはありません。

相続税を支払った側が、払いすぎた相続税に対して税務署へ還付申請をして初めて、払いすぎた相続税を還付してもらうことができます。

この相続税の還付は「更正の請求」という手続きを踏んで行うのですが、平成23年12月2日以後の相続税については期限が法定申告期限から5年以内となっていますので、注意が必要です。

 

相続税の過払いが発生してしまいやすい理由

財産の評価額の付け間違いが相続税の過払いの理由のメインです。相続税の申告をするためにはすべての財産に金額を付けないといけません。相続財産が現預金や上場株式など金額がすぐわかるものであれば、間違えることはありません。1,000万円の現預金は、どの税理士が見ても1,000万円です。

ところが相続財産の中で特に土地等は税理士が計算をしないと、評価額がわかりません。

評価方法が明確でないものも多く、実状をきちんと把握しないと評価額が高くついてしまい、結果相続税が過払いになる可能性がでてしまいます。

 

相続税の還付事例

以下の様なケースが相続税の還付事例としてあります。

 

1、土地の上を高圧線が通っているのに減額をしていなかった事例

高圧線の下にある土地は、高圧線があることで建物の建設に制限が設けられています。そのため、使い勝手が悪くなるので通常の自用地の評価から、高圧線のある区分地上権に準ずる地役権の範囲について制限の分だけを状況に応じて控除する必要がありますが、詳細な調査をせずに当初申告が行われており、この減額が取れていませんでした。この確認については、地役権が設定されている場合には分筆されているので登記簿謄本を見ればわかりますし、地役権の設定が無い場合には電力会社に問い合わせる事で判明します。

家屋が全く建設できないような土地の場合には50%の減額が、建築に制限がある場合には30%の減額が適用できます。土地の評価額は大きくなることが多いので税額に与える影響も大きくなります。

 

2、広大地評価の適用漏れだった事例

敷地が1,800㎡以上の広さがある土地を相続された方だったのですが、広大地評価を適用していませんでした。当初は確かに周辺にマンションが複数あるため、マンション適地に該当して広大地評価をするのは無理なのかなと思っていたのですが、容積率を確認すると100%でした。容積率が100%の場合、マンション適地とは言えませんので広大地評価を適用できる可能性があります。

広大地評価が適用されると今回の場合で広大地補正率が51%となるので49%減となり半分程度の土地の価格で相続税の計算をし直すこととなります。

なお平成30年1月1日以降の相続については「地積規模の大きな宅地の評価」という制度に変更されています。

 

3、自社株式の評価を見直しした事例

会社を経営されている方の相続には、自社の株式が財産としてあります。

もちろん上場はしていませんのでその株価については計算が必要なのですが、その計算方法の中に純資産価格をベースに計算する項目があるのですが、そこは本来、相続税評価額で計算しないといけないにも関わらず、会社の貸借対照表の数値が入っているケースでした。

 

項目 修正値 当初
売掛金 回収可能性を考慮して回収不能額は減産します 回収可能性は考慮せず全額計上
前払費用 前払費用は換金価値がないため、0評価にします 全額計上
建設仮勘定 建設中の家屋は70%で評価することができます 全額計上
電話加入権 1本1,500円(愛媛) 全額計上

上記のような項目を重点的に見直ししていくことで自社株の純資産価格を下げる事が出来、その結果会社の株式の評価額の減額にも繋がり相続税の還付となりました。

 

4、いびつな形状の土地の減額を適用していなかった事例

上記1と同様のケースですが、土地の形が正方形であえれば利用価値や売却価値は高いのですが、三角形やいびつな形の土地は使い勝手が悪く、相続税の計算上、その土地の価格は下がることになります。ですがその計算には手間や専門のソフトが必要で、あえてその減額をせずに正方形の土地と同じ評価をして提出するケースをお見掛けします。高い土地の評価額(=高い相続税額)としていれば、税務署には文句は言われないからです。専門家としてそこはしっかりとやってもらいたいポイントですよね。

この適用により、土地の評価額を最大30%まで減額できる可能性があります。

 

5、土地の個別事情を考慮した減額が適用出来ていなかった事例

忌み地や庭内神しがある場合などがこれに該当します。

忌み地とは、わかりやすく言うと近隣に墓地があるような土地です。このような土地は利用価値が低減するので相続税の評価上も10%金額が下がります。

庭内神しとは、屋敷内にある「神の社」「祠」といった、ご神体を祀り、日常礼拝しているものを言います。ご神体自体は相続税の非課税財産ですし、その土地も「墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」の準ずるものに該当するために非課税となります。その土地全てが減額や非課税になるわけではないのですが、現地調査を行わずに相続税申告書を作成している場合にはこういった減額を使わずに計算されている場合があるので相続税還付の対象となることが想定されます。

 

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