遺言書とは?
「遺言」は、一般的には「ゆいごん」と読まれますが、正式に言うと、法律上は「いごん」と読まれます。遺言とは、被相続人の最終の意思表示のことをいうと定義されます。よく勘違いされやすいのですが、最終の意思表示といっても、いわゆる「遺書」のように、死の間際にした意思表示という意味ではありません。
被相続人の最終の意思表示とは、要するに、自分の死後に生じることになる財産の処分等の法律行為に対しても、自分の意思表示の効力を及ぼすことができるということです。
この遺言は、被相続人となる方(遺言者)が、相続による遺産の承継について、ご自身の意思を反映させるためにとることができる唯一といってよい方法です。また、遺言者の意思を遺せるというだけでなく、遺言をしておくことによって、相続人間での遺産争いを予防し、または最小限化させることができるという意味をもっています。
その意味で、遺言は、被相続人にとって、ご自身の意思に基づいて遺産の相続をしてもらえるというメリットだけでなく、後に残される相続人にとっても、無用な争いを最小限化できるというメリットもあるのです。
遺言書の作成が必要な場合
1、子供がいない夫婦の場合
夫婦二人暮らしで子どもがおらず、ご両親も既に亡くなっているようなケースには遺言書がないとよくもめるケースとなります。この場合に夫が亡くなると、妻だけが相続人だと思われる方が多いのですが、他にも兄弟姉妹も相続人となり1/4は相続分があります。妻は夫の遺産を全て相続できると思っていたのですが、相続後に疎遠だった夫の兄が急に現れて、「自分にも4分の1相続する権利がある」と主張してくる場合が考えられます。
こうならないためにも、生前に遺言書を作成して「財産は全て妻に相続する」旨を表記しておく必要があります。兄弟姉妹には遺留分がないので、この問題は遺言書の作成で回避できることになります。
2、相続人以外の人にも財産を残したい場合
子供たちは都会に行ってしまっていたので、田舎の高齢の母親は隣人の方に事あるごとに訪問してもらったり、ご飯を作ってもらったりと身の回りの世話をしてもらっていました。大変お世話になっていたので財産の一部をこの隣人の方にも相続したいと考えていました。ところが隣人の方には血縁関係もなく相続人ではないので遺産相続をすることはできません。この様な場合には遺言書が必要です。
相続人以外の方に、相続による財産を取得してもらいたいと思うなら、遺言書にその旨を記載しておかないと、その隣人には一切財産は行かず、相続人である子供たちだけで財産を相続することになります。
このケースは正式な婚姻関係では無い、内縁関係の方に財産を残したい場合も同様です。
3、事業を行っている場合
法人個人問わず、事業用財産や会社の株式が相続財産の中にある場合にも遺言書の作成が必要なケースがあります。後継者はきちんと決まっていて、その方に事業用財産や会社の株式は相続してもらいたい場合です。
遺言書が無いと、事業運営に全く関与しない相続人が事業用財産や会社の株式を相続することになり、事業運営に支障をきたす場合が考えられます。このような場合にも遺言書をしっかりと作成しておくことで分割方法を指定することができるので、問題を回避することができます。
遺言執行者とは?
1、遺言執行者とは?
遺言執行者とは遺言書に書かれている内容に沿って遺言を実現していく人の事で具体的には相続人の代理人として相続財産を管理したり、不動産の名義変更など各種手続きを行います。未成年者や破産者以外であれば銀行や法律の専門家である税理士、弁護士、司法書士、行政書士や、一般の相続人や友人等も遺言執行者になる事ができます。税理士、行政書士、弁護士、司法書士へ遺言書作成依頼をする際に、あわせて遺言執行者を指定するケースと、相続発生後に家庭裁判所に申立をして遺言執行者を指定するケースがあります。
2、遺言執行者を選任するメリット
もちろん遺言執行者が存在しなくても遺言は有効で、実行は可能ですが、遺言執行者を選任することで以下の様なメリットがあります。
- 金融機関での預金相続手続きで煩雑な書類が不要でスムーズに進みます。
- 遺言書の内容に納得していない相続人がいたとしても、実印や印鑑証明をもらう事なく遺産分割を進める事ができます。
いずれにしても、簡単に進める事が出来る、スムーズに進める事が出来るというのが最大のメリットとなります。
遺言執行者になれる各士業の違い
各士業が遺言執行者になる事ができますが、士業ごとに以下の特徴があり、それぞれに応じて遺言執行者を依頼するのがよろしいかと思います。
1、税理士が遺言執行者となる場合
税理士は税法の専門家ですので、相続税の申告が必要になりそうな方の場合には遺言執行者を税理士に選択すると良いと思います。遺産分割の方法で課税される相続税も変わってくるので、その点も考慮した遺言書作成のプランニングもさせていただきます。
2、司法書士が遺言執行者となる場合
司法書士は登記を代行することができますので不動産の名義変更などが多い方は、遺言執行者を司法書士にすることで他の士業に依頼する場合よりもワンストップ対応が可能です。また民法の知識に関しても税理士より精通していますので遺留分の問題等が発生しそうな場合にも適しているといえます。
3、弁護士が遺言執行者となる場合
弁護士は遺産争い(争族問題)が発生しそうな場合には、遺言執行者に適任です。
司法書士同様に民法の知識に精通しているので、円満に相続業務を終えたいという方は遺言執行者に弁護士を選定するのが良いかと思われます。
4、行政書士が遺言執行者となる場合
遺言書の作成からご依頼されたい場合には行政書士に依頼すべきです。ただ後の相続税申告や、不動産の登記、遺産争いが想定される場合には、行政書士資格を持ち合わせた税理士、司法書士、弁護士に依頼された方がよりスムーズに遺言執行手続きが進むと思われます。
当事務所で遺言書作成をご検討、遺言執行者の選定をご検討のお客様へ
この度は、当事務所ホームページをご覧いただきありがとうございます。
当事務所では、税理士・行政書士である私を始め、連携している司法書士、弁護士がいますので、遺言書作成、および遺言執行についてどのパターンに関しても対応可能でございます。税務、法務、ご依頼者様のお気持ちの三点から一番ベストな方法をご提案できますのでお気軽にお問い合わせください。