法人税の青色申告と白色申告について
法人税の申告にも所得税同様「青色申告」と「白色申告」があります。
所得税の申告であれば白色申告もお見掛けしますが、法人税の申告において白色申告というのは、当事務所にご依頼いただく前に無申告等で青色申告を取り消された方を除き見たことがございません。
要するに法人であれば青色申告は当たり前!という事です。
青色申告を始めるにはどうすればいいか?
青色申告の承認申請書の提出
青色申告を始めるには簡単な申請書(青色申告承認申請書)を、
- 新設法人の場合には設立後3か月以内か、設立事業年度終了の日の前日のいずれか早い日までに、
- すでに設立されている法人は、適用を受けようとする事業年度開始の日の前日までに、
所轄の税務署に提出すれば適用が受けられます。
提出後、OKなら税務署からは特に連絡はありません。
青色申告が取り消しにならないために必要な事項
せっかく承認を受けた青色申告を継続するためには以下の要件が必要になります。
- 資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を複式簿記の原則に従って整然と、かつ、明瞭に記録すること
- その記録に基づいて決算を行うこと
- 仕訳帳、総勘定元帳その他必要な帳簿を揃え、取引に関する事項を記載すること
- 仕訳帳には、取引の発生順に、取引年月日、内容、勘定科目及び金額を記載し、総勘定元帳には、その勘定ごとに記載の年月日、相手方勘定科目及び金額を記載すること
- 棚卸表を作成すること
- 一定の科目をもって貸借対照表及び損益計算書を作成すること
- 帳簿書類を10年間整理保存すること
つまり、複式簿記によって帳簿を作成し、その会計の根拠となった書類も10年間は明瞭かつ整然と管理して保存しておく必要があるということです。
ちょっと難しく感じるかもしれませんが、領収書請求書をきちんと整理して、適切な会計ソフトで記帳を行って、毎年法定申告期限までに確定申告をしていればこの要件を逸脱するケースはほとんど無いと思いますので安心してください。
青色申告のメリット
青色申告のメリットとしては以下の通りです。
1青色欠損金の繰越控除
事業を行っていると外的要因・内的要因により赤字の期も存在します。創業時の法人であれば創業年度は赤字という方も珍しくありません。その場合にその赤字を翌期以降の黒字と相殺できる制度が青色欠損金の繰越控除制度です。
例えば中小法人等で創業年度に500万円の赤字を計上したとします。2期目には事業が軌道に乗り、300万の黒字を計上できたとすると、本来であればこの2期目は黒字が出ているのでこの300万円の利益に対して法人税等が課税されることになります。ですが、青色申告の承認を受けていた場合には創業年度の赤字を翌期以降10年にわたって黒字と相殺することができるのです。よってこのケースであれば2期目も課税所得は0円(黒字300万円△赤字500万円)となり、法人税等は課税されないことになります。そして残った200万円もさらに翌期以降の黒字と相殺することができるのです。
仮に資本金が1憶円超等の一定の法人である場合には、欠損金の繰越控除額は当期の税務上の課税所得の50%が限度になります。上記例で行くと、150万円だけ欠損金が使える事になり、残りの150万円に対しては法人税が課税されることになります。
2特別償却・割増償却
特別償却とは、代表的なものに中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却)がありますが、これは対象資産を購入した年度の法人税の支払いを繰り延べる効果のある償却です。
通常の償却に加え、取得価格の一定割合(30%)を上乗せして減価償却費を計上することができる制度です。
要するに通常の減価償却ですと購入年度は資産の取得費用として多額の現預金が支出されるにも関わらず、法人税法上損金(経費)になるのは通常の減価償却費部分しかありませんので、現金預金が手元にないの利益が出てしまい、税金負担が出てしまう恐れがあります。そこでこの特別償却を使って追加で上乗せして償却費を計上することで利益を圧縮し、購入年度の法人税を減らすことができるのです。その代わり各期間を通じて経費に算入できるのは資産の取得価格を超える事はできませんので、購入年度に多額に償却した分、将来に償却する金額は少なくなるので、将来の法人税は膨らみます。これが法人税の支払いを繰り延べる効果があるといわれる部分です。
一方割増償却とは、購入年度のみではなく一定期間償却額が増える制度の事を言います。通常の償却費に加え、通常の償却費の一定割合を上乗せして複数年度に渡って償却費が増える制度です。この制度も同様に法人税の支払いを繰り延べる制度です。
特別償却の制度は新設や廃止、計算方法の変更が頻繁に行われるので、適用要件等の確認には注意が必要です。
3税額控除
税額控除とは代表的なものに中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の税額控除)がありますが、これは対象資産を購入した年度の法人税の支払いを減額する効果があります。特別償却と違う点は、法人税支払の繰り延べではなく実際に支払額が減る点です。
中小企業投資促進税制の場合の税額控除限度額は、基準取得価額の7%相当額で、この金額を法人税から差し引くことができます。(ただし、その税額控除限度額がその事業年度の法人税額の20%相当額を超える場合には、控除を受ける金額は、その20%相当額が限度となります。)この制度は将来の償却費に影響は与えませんので、一度減額されたものが将来に上乗せされるといった事象は発生しません。
この税額控除の制度も特別償却と同様に、制度の新設や廃止、計算方法の変更が頻繁に行われるので、適用要件等の確認には注意が必要です。
4中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
通常、取得価額が10万円を超える資産は購入した年に全額を経費として費用に入れる事は出来ず、減価償却という制度を通じて法定耐用年数が及ぶ期間で分割して経費化されます。ですが青色申告の承認を受けている場合には30万円未満の資産であれば、固定資産台帳に計上してその全額を経費に算入することができます。ただし、年間300万まで(事業年度が1年に満たない場合には300万円を12で割って、これにその事業年度の月数を掛けた金額が限度になります。)が上限です。
要するに30万円未満であれば減価償却費をせずに一気に購入金額を経費に算入できるので法人税の計算上有利になります。
適用方法は、その取得価格総額を減価償却費等の項目で損金経理して、確定申告書等に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表16(7))を添付して申告をするだけです。
ただしこの場合でも、市町村へ支払う償却資産税の対象にはなるので注意が必要です。
5税務調査時に推計課税を受けない
推計課税とは、税務調査時に帳簿書類の紛失などで正しい売上や経費が分からないときに
- 近隣の同規模同業者の差益率(売上に対する粗利益の割合)
- 過去数年間の損益状況
- 売上や仕入れ・経費の単価
- 水道やガスの使用量
などから所得を推計して、課税する方法を言います。
これがどう恐ろしいかというと、例えば過去に比べて仕入原価が上がってしまい、調査対象年は業績が悪かった場合でも仕入原価が低かった過去のデータから推計して調査対象年の利益を算出されてしまいます。本当は赤字で現金預金が手元にないにも関わらず黒字の決算とされてしまい納税が発生するといった事態が発生してしまうのです。仮にこれに文句を言おうとしても、帳簿書類や請求書をきちんと保管していないのですから証拠がありませんので税務署の言い分を聞き入れるしかありません。これが推計課税の恐ろしい点です。
青色申告を受けていた場合にはこの推計課税が適用されません。
ですが、青色申告だからといって帳簿書類をずさんにしていれば、青色申告の取り消しをされてから推計課税をされるケースもありますので、絶対に推計課税が適用されませんとは言い切れませんのでご注意ください。
青色申告のデメリット
これは正直言ってありません。
よく青色申告だと正確に帳簿をつけないといけないから大変だよね、これがデメリットなんじゃないの?って聞かれます。
確かに青色申告法人として運営していくのであれば、法人税法が定める帳簿書類を備え付けて取引を記録し、保存することが必要になるので、おっしゃる通りこの事務作業量の増加が、白色申告法人と比較すればデメリットと言えないこともありません。
ですが、正確に記帳して財産や債務、損益の状況を明確にして、その証拠資料である請求書や領収書を保存しておくという要件は事業運営していく上で税務上以外にも必要になると考えられます。
たとえば、
- 金融機関から融資を得るとき
- 会社の状態や成績を把握するとき
- 事業計画を立てるとき
等々…
金融機関から資金調達を受けたいなと思う時には試算表や決算書の提示が求められます。その際にずさんな経理状況で作成された資料を基に金融機関は貸付を行ってはくれません。他にも事業の立て直しを考えている際に、現状を全く反映していない試算表を基に検討しても全く意味がありません。要するに事業運営をしていく上で、正確な帳簿作成やその帳簿保存するための管理体制は必須の機能だと考えられます。
法人形態にするとほとんどの方が税理士に依頼されると思いますので、是非そのあたりもアドバイスを受けていただいた方が会社にとって有利な事業展開になります。
当事務所でもご相談承りますのでお気軽にご相談ください。
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